民事信託のすゝめ ①

みなさま、こんにちは! スタッフTKです。
まるで秋をすっ飛ばしたかのように、めっきり寒くなりましたね。
私TKは夏よりも冬のほうが好きなのですが、少し厚着をして家を出ると地下鉄の暖房で汗だくになるのが苦手です。
クローゼットの奥からヒーターを引っ張り出してきて電源を入れると、焼けたホコリの匂いが鼻につきますね。
炎上しないかハラハラしますが、1年ぶりに嗅ぐ妙に香ばしい匂いは、冬の訪れを感じさせてくれます。
地べたに座るのが苦手なもので、こたつと袂を分かち10年以上になりますが、この香りのせいで、ふと恋しくなりました。
いつか家を建てるときは、必ず掘りごたつを作るのだと心に決めています。

さて、本日から数週に分けて、民事信託について解説します。
私TK、根っからの楽観主義者なのでエスケープゾーンを作るのが嫌いで、「万が一」に備えたことといえば自動車の任意保険くらいなものです。
同じ理由で、付加的な生命保険や厚生年金とは一生分かり合える気がしないのですが、そうも言っていられないので勉強してみました。

そもそも民事信託とは、どういう仕組なのでしょう。
なんのために、民事信託を利用するのでしょうか。

内閣府『平成29年版高齢社会白書』より

最も一般的な目的は、「認知症対策」です。
長寿命化が進み、人生のなかで認知症を患う方が急速に増加しています。
「2012年は認知症患者数が高齢者人口の15%という割合だったものが、2025年には20%(5人に1人)が認知症になる(内閣府『平成29年版高齢社会白書』)」という推計もあるとセミナー等では紹介されます(認知症患者数は高齢者人口の増加によって当然に増加するでしょうが、なぜ有症率(人生において認知症になる可能性)が上がるのか……理解不能でしたが、どうやら前提条件に秘密があるようです。記事最下部でご紹介します)。

認知症を患ってしまうと、たとえば認知症になった方が所有する土地の売買契約など、相続対策に不可欠な契約を無効とされてしまうケースがあるようです。
しかし、民事信託を設定することで、このリスクを回避することが可能です。

民事信託では、信頼できる家族(たとえばご子息)に財産の管理を委託します。
受託した方は、委託した方のために、その財産を管理する義務を負います。
少々語弊はありますが、いわば委託者の代理人(代弁者)を定めておくのです。
そうすることで、万が一委託者に判断能力がなくなっても、契約行為をすることができる、というわけですね。

最も大きな目的となりがちな「認知症対策」についてご紹介したところで、今週はこのへんで。
民事信託を利用する目的は、ほかにもたくさんあります。
来週以降もお楽しみに!
スタッフTKでした。

さて、認知症有病率の上昇についてですが、私は医学の専門家でも政治学の専門家でもないのでご留意を。
メモ程度に御覧くださいね。

先出の推計は内閣府が出したものなのですが、グラフ左上の前提条件が面白いですね。
「各年齢の認知症有病率が一定の場合」は、いま(論文当時ではなく2021年現在)相対的に人数の多い70-75歳の人が、認知症有病率が10pts近くも上昇する75歳を越え、認知症有病者が増えるため、高齢者全体に占める有病者率が上昇すると思われます。
「各年齢の認知症有病率が上昇する場合」も同じ影響を受けるのですが、それに加えて認知症発症に影響を及ぼすといわれる糖尿病など生活習慣病の有病率が増加することも考慮しているようです。
おそらく社会保障費の増加を論じるために、このようなグラフにしているのでしょう。
ですから、「民事信託を利用したほうがいいですよ」という文脈で紹介するのであれば、さも聞き手が認知症になる危険性が今より高くなるかのように、「2025年には今よりも認知症になる確率が上がって、高齢者の5人に1人がかかるので信託を利用したほうがいいですよ!」なんて言うのは、少し不誠実かなという気もします。

首相官邸資料(https://bit.ly/3AVySYn)より

ある人が人生において認知症になる確率が将来高くなるわけではなく、あくまで65歳以上全体に占める有病者数の割合が高くなるだけなのです。
その年齢ゾーンの普通の人が認知症になる可能性はこれくらい、糖尿病にかかっていれば少し高くてこれくらい、といった捉え方がよいかもしれませんね。
繰り返しますが、あまり深く読み込んだわけではないので、軽く流してくださいね。
それでは、またお会いしましょう!
スタッフTKでした。

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